Cat Expoと人生はいつも楽しい(1)

タイ音楽

山麓園太郎です。サワディーカップ。はじめに少し私事を書かせてください。

昨年11月末に開催されたタイの音楽フェスCat Expo(第12回)から帰国して間もなく、母が亡くなりました。

5年間の入院の末でしたので、いつか来るこの日への覚悟はあり、病院から葬儀会場へ向かう車中で母の横に座った僕は「まるでBillkinの映画みたいだな」と思いながら「ほら、良く買い物に行ったスーパーだよ」と声をかけました。

映画「おばあちゃんと僕の約束」はBillkin演じるエムの序盤でのボンクラっぷりや祖母メンジュの病気の進行が僕と母の状況に酷似しており、半年前に観たこの映画のおかげでリハーサルが済んでいた、としか思えないのでした。

年末の仕事納めとなったFM North Wave「サバーイサバーイ・タイランド」の収録に母の事は伏せて臨み、Billkinへの感謝を込めて「From Now On」を取り上げました。T-POPをかけながらしゃべっている限り、僕はいつもの僕でした。こうしてタイという国にはいつも助けられています。

実は母は、僕の仕事について殆ど何も知りません。親子の間柄で妙に気恥ずかしさがあり、「なんでそんなに何度もタイに旅行に行くのか、さっぱり分からないわ」と言われながら、ラジオに出ている事もコラム執筆など過去の仕事の事もずっと隠していました。

葬儀後の慌ただしい日々がまだ続いておりますが、「これからは空から見られてるから、色々バレるだろうなぁ(笑)」と頭を掻きながらCat Expo 12の記事を書いていきます。

例年Cat Expo会場だった、観覧車がシンボルの「ワンダーワールド」という遊園地跡地から1.5kmほど南にあるSiam Amazing Park1980年開業の、東南アジアで最も古くから営業する遊園地です。2019年にも一度Cat Expo会場に選ばれていますが、2022年に新エリアを拡張。この新エリア「Bangkok World」に物販ブースを集約し、旧エリアに2つ、新エリアに4つのステージを分散させて混雑緩和を図りました。

※画像はCat Radio公式より

会場で偶然この遊園地の副社長と会ったんですが、とても若く音楽好きな方でした。拡張した新エリアのPRとしてCat Expoを誘致したのは間違いないでしょう。Cat Expo側としても、新鮮味のある会場で飲食やトイレ、清掃などのリソースを遊園地から提供されての開催は魅力だったはずです。

物販ブースは固まって配置されていて見て回るのは楽です。まずCat Radioのブースへ。

滞在中の着替えに黒いTシャツ購入。シリキット王太后の逝去で服喪期間にあたり、会場内でも黒か地味な色の服装の人が目立ちました。

実際には2日間にまたがってますが、このフェスの名物「ブースに本人が来る」をまとめて載せましょう。

日本にもファンが多いH3F
日本語歌詞を含む「No Turning Back」が話題になったJūji。いつか東京で観たいぞ!
Serious Bacon。記事冒頭のBillkin「From Now On」を書いたのもこの二人
レーベル契約無しのインディーズでもアリーナ規模のコンサートを成功させたSafeplanet
Tokyo Playgroundでの熱演が記憶に新しいKIKI
バンコク・シティ・ポップを代表するPOLYCAT
Phum Viphurit。ファンだけでなくアーティストまでもが彼に会うためブースを訪れた
キャリア12年目の大人ポップス、ラジオでも紹介したNo One Else
元BNK48のSatchan

飲食は普段パーク内で営業している飲食店と屋台が主で、タイ在住の人が言うには万人受けのするフードコート的な味だそうですが、僕は楽しめました。パーク内だけで使えるチャージ式のカードでQRコード決済が出来る他、現金も使えました。

カードにチャージ(BTSカードもそうだけど、タイでは「チャージ」より「トップアップ」って言った方が通じる)中の社長
会計も速いし小銭が増えないので便利でした。ただし最終チャージから180日未利用だと無効になっちゃうよ!

タイ料理はもちろん一通りあるし、↓

節約したければジョークのカップ(タイのお粥。お湯はサービス)や串焼きなどもあり。僕はハンバーガーやイサーン地方の発酵ソーセージとコーラの組み合わせを2日間で5回位キメてました。飲み物だけなら合計10本以上買ったと思う。

カップお粥30バーツ

もちろんお酒も販売。お客さんの酔っ払い度は例年に比べて高かったけど治安は良かったです。↓

それと、裏技的に使えたのが味の素が展開するBirdyブランドのブース。↓

ATLASとタイアップして激プッシュ中のコーヒー飲料「Birdy Cafe」。新旧エリアそれぞれにブースを構えて、通りがかる人全員に渡す勢いで試飲ボトルを配ってるので実質飲み放題(笑)。僕も時々遠慮したり時々おかわりしたりしてかなり助かりました。美味しいからコンビニで買ってみて!

お客さんは思い思いにのんびり楽しんでますが僕はタイムテーブル見ながらダッシュです。まずOFFICESYNDROMEの演奏を聴く!

彼らはZ世代。「同世代に向けて感情を解き放てるような音楽を届けたい」そうです。デビュー前、古いオフィスビルの一室を自分たちでスタジオに改装して練習と作曲に明け暮れていた時、備品の古い椅子で背中を痛めたのがバンド名の由来。

キーボードではなくサックス奏者を擁するのも特徴。

Nine(Saxophone)

ギタリストAtomは海外に留学して音響工学と音楽ビジネスを学んでいます。

Atom(Guitar)

音楽ビジネスを学んだ彼らしく、僕にプレスキットをくれました。
バンドのロゴやアー写、バイオグラフィーとMusic Video、さらにステージでの必要機材と音響スタッフへの連絡事項、楽曲ごとのステージ照明の色指定、SNSのアカウント一覧。レコードレーベルやフェス関係者からいつ声がかかっても対応できるように準備が整っています。さすが!

ここは旧エリアのステージ。周りは年季の入った遊具と古めかしい設備。でもそこで今、若い世代の新しい音が鳴り響く。伝統的なものが大切に受け継がれながら、新しい表現も毎日生まれ育ってゆく・・・そんなタイのポップカルチャーを象徴するようなパフォーマンスでした。

彼らが演奏するステージの裏手にはこんな風景が

彼らの初めてのアルバム「GRIEFGRIEF」もデジタル配信中です!

同じ旧エリアの奥のステージではBNK48がスタンバイしています。

この日の出演メンバーはArlee/Blythe/Earn/Emmy/L/Marine/Micha/Monet/Neen/Niya/Praew/Yoghurtの12人。僕の神推しのSaonoiは居なくて、顔が分かるメンバーはLとMonet位なんだけどとにかく撮る!と向かった取材エリアには後輩たちを観に来た1期生のNamsaiもいました。

(左)別のステージでMCを務めた元BNK48のNamsai

「まさかのConfession」でスタート。取材エリアは大混雑だけどカメラマン同士で自然に譲り合いが発生。

Neen
Emmy
Micha
Blythe
L
Praew

アイドルグループとしては地味な印象のブラウン系でまとめた衣装が、珍しく涼しかったこの日は会場の空気にピッタリでした。一年中暑いタイの人にとっては雪景色とか秋冬ファッションってファンタジーだと思うんですよ。だから凄く秋らしさが強調されて良かった!
ずっと観ていたいけど他のステージにも行かなきゃ!ここから一番距離がある、新エリアの奥のステージへ急ぎました。

新エリアで一番大きなステージは入場口からの導線が分かりにくくて、序盤に出演のJūjiはまだ少ない人数を前に演奏を始めましたが、ステージが進むにつれて観客が増えていきました。2025年のCat Radio年間チャートTOP100に3曲を送り込んだ実力は、今年一層注目を集めるでしょう。

ひねりが効いていてお洒落なコード進行と、口当たりの良いショコラみたいに滑らかな歌声。ぜひ聴いてみてくださいね。

続いてNINEOKMAIのステージへ。

彼らの「日本のバンドっぽい感じ」は他の出演者にはない大きな特徴だと思います。各パートがパズルのように組み合わさって曲のムードを作ってゆくアレンジとか、要所要所でリズムのキメがビシッと決まる生真面目な集中力とか、1ステージで完全燃焼しようとするパワー配分とか。

客席は1曲目から満員。デビュー曲での「大丈夫?」→「ナイオーケーマイ」のコールアンドレスポンスも凄い熱気でした。

いつか日本で観たいバンドのひとつです。「日本のバンドっぽい感じ」があふれるデビュー曲のMusic Video、ぜひ見てください!

Singto Numchokを初めて観たのは2016年の夏。「タイのジャック・ジョンソン」というキャッチコピーと共に英語歌唱のアルバム「Chok Dee」をリリースして来日、HMV&BOOKS TOKYOでインストアライブをした時です。

あれからはや10年。この時の「海と波と潮風」なシーサイド・ポップ路線を残したまま出身地である東北部テイストを取り入れたら大ヒットを連発。今ではフェスの盛り上げ番長です。

彼の2つ後にはJeff Saturの出演が控えていて、場所取りをしていたJeffファンが少なからずいたんですが、Singto Numchokは「君たちJeff Saturが観たくて来てるんだろ?」と客イジリを始めました。

「もうちょっとでJeffが出てくるからね。少し待ってて・・・そっちの君もかい?」

苦笑がもれる客席。しかし執拗に彼が繰り返すうちに不思議なグルーヴが生まれてきます。

「よし、Jeffが出てきた時のために練習しよう。キャー!って言ってみて」

巧みな話術でJeffファンを巻き込んでゆき、気が付けば「キャー!」の声はヒット曲を歌うSingto Numchok自身に。見事過ぎる。

アーティストとしての品も一切落とさないまま、芸人並みのホスピタリティで観客を一人残らず楽しませる。音楽フェスには欠かせない人でした!

他の出演者の写真も載せときますよ!

YOKEE PLAYBOY
MEK SIPPANUN
Numcha
PiXXiE

さぁ、間違いなく初日の目玉であるJeff Saturきたー!

観客の「キャー!」はSingto Numchokでリハーサルが済んでいたので(笑)音量最高潮、しかしJeffの歌声がそれにも負けぬ音量で響き渡ります。元の声がどれだけ強くて大きいかが分かる。うおぉぉぉ、今凄いもの観てるぞ?!

歌ってる時はシリアスな表情で孤高な雰囲気があるけど

トークタイムでは良く笑って水も飲んで気さくな感じ。

しかし歌に戻れば表情が一変。鳥肌が立つほどの表現力、そして耳から胸に突き抜けるハイトーン。観に来て良かったー!

Jeff Saturは次に出演のNont Tanontのステージにも現れて「Time Flies」を一緒に歌いました。

Nont Tanontもいつかタイフェス東京に出て欲しいひとりですね。もう日本でもコンサートしてるけど、やっぱり代々木で通りすがりの人に観て聴いてもらいたい。

その後もいくつかのバンドのステージを観て・・・

SLAPKISS
TOFU
POLYCAT

最後にKIKIのステージへ。
2025年の日本ツアー。青山・月見ル君想フを満員にし、Tokyo Playgroundで歌舞伎町タワー前をクラブに変え・・・たとこまでは見たけど九州でのフェス出演(Music City Tenjin)は行けなかったのでタイで観よう、と。この年3回目のKIKIです。そこそこマニアだ(笑)

KIKIは海外人気に火が付くのが速かったバンドと言えます。フレンチ・エレクトロをベースに持つタイのバンドがフランスの音楽フェスに出演を果たした、というのは、まず本場の人に刺さる音が鳴ってたからでしょう。その上で色々な国の人に刺さりそうな要素が混じりあって(例えば日本的な哀愁を感じるシンセのフレーズとか)、結果アジア各国のフェスに呼ばれ、Spotifyではアメリカのリスナーが最も多かった(2025年)。そのミクスチャーのセンスとバランス感覚こそがタイらしさで、そこをタイの観客はどう捉えてるのか?が知りたくて。

タイの皆さんノリノリでした。踊りまくり。いわゆる「T-POP」からはある意味一番遠い音が鳴ってるけれど、やっぱりタイじゃないとこの音は生まれなかった。

僕の前では酔っぱらってフラフラの兄ちゃんがかろうじてフェンスで身体を支えながら揺れてて、隣で彼女が呆れて「ちょっと休む?」とか訊いてるんだけど、兄ちゃんどうしてもこの場を離れたくないらしい。

だよねー。「音楽で踊る」っていうプリミティヴな快楽を今のタイで最もエレガントな形で提供してるのがKIKIじゃないか?って思うもんね。

BassのBookieshくん

終盤にさしかかるとBassのBookieshくんが演奏をギターのNonくんに押し付けて(笑)ステージを降り、客席を走り回り始めました。

その後をファンが付いて回りサークルモッシュが発生(中央への突進は無い、平和で安全なやつ)。皆周囲に気を配ってぶつからないようにしながら最高に楽しそうに周回。会場は笑顔でいっぱいです。日本のフェスなら事前に禁止令が出るはずのモッシュが、こんなに凶暴さゼロで行なわれる光景見たことない。これもまたタイ。

秋から年末にかけて音楽フェスが集中するタイで、Cat Expoは「アーティストをサポートし、ファンとアーティストを双方向で繋げる」という独自の個性で固定ファンを掴んでいますが、今回は客層が若返った印象がありました。Siam Music Fest のような市の中心部で行なわれる無料のフェスが新規ファンを増やすのと同時に、T-POP市場が成熟してインディーズを深掘りする楽しみ方が広がってきたのかも。

同時に、ブースでファンとアーティストが交流する光景からはコミケとの共通点を感じました。同人作家やコスプレイヤーやVTuberの皆さんが売り子としてもブースに立ち(Vtuberの人はヴァーチャルで)、ファンと直接言葉を交わす。これがタイの人から見るとコミケ固有の文化として感じられるらしいんですが、逆に日本人から見るとアーティストと交流できるタイの音楽フェスは夢のような世界です。

KIKIのようなタイのバンドがこれからも日本のフェスに出演して音楽的な交流が進めば、いつか日本の音楽フェスでファンとの交流が普通になるかもしれないですね

明日も思いっきり楽しむぞ!と高揚した気分でGrabでタクシーを手配し、フアマークに取った宿に帰りました。ちなみにタイでタクシー配車アプリとしてポピュラーなGrabですが、ドライバーが見つかり難い時はより高い運賃のオプションも有効にすると秒で見つかるうえに「趣味でやってんのか?」って位タクシーらしからぬ大きくて乗り心地快適なクルマがやってきて送迎気分が味わえます。日本のタクシー料金と比べて安いんだからとっとと帰宅して寝る時間にあてた方が良い!

今回はここまで。次回はNanonくんやPERSES、そしてブースで会った地下アイドルの皆さんなどを取り上げたいと思っています。

この世に生まれてなかったら、タイ旅行が毎回こんなに楽しいなんてことも分からなかったでしょう。母さん、僕に人生をくれてありがとう。もう天国で父さんと一緒だよね?よろしく言っといて!(笑)

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