来日公演が決まったQRRA(T-POP)を徹底解説!

タイ音楽

山麓園太郎です。サワディーカップ。

2023年の暮れ、僕はタイポップス関連のお仕事を2つ同時進行で、いかにも年末らしい忙しさを体験していました。ひとつが、ぴあから先日発売された「T♡land Star Magazine(タイランドスターマガジン)」への記事執筆。もうひとつが北海道のラジオ局 FM North Waveの番組「Sabaai Sabaai Thailand(サバーイサバーイ・タイランド)」への出演です。今回はBNK48のサブユニット、QRRA(クァラー)の初来日決定を記念して、この番組でも紹介したQRRAの詳しい解説をしようと思います。

T-POPのボーイズグループ/ガールズグループが2組ずつ出演というこのイベント、QRRAの他にはGMMが手掛けるPERSES、チャンネル3のリアリティショー出身のPROXIE、タイ/フィリピン/インドネシアのAKB海外グループと日本からSKE48のメンバー各1名で構成されるQuadlipsが出演という事で、コンパクトながら興味深いラインアップになっていると思います。タイのボーイズグループも、今とても活気があるんですよ。もともとK-POPファンだった人が推し増しで追加するのが、タイ国内でも日本含め海外でも増えてきてるみたいですね。

AKB48の海外グループであるBNK48。楽曲はAKB48の曲のタイ語翻訳版がメインで、オリジナル曲もありますが、曲調や衣装がAKBスタイルを逸脱する事はありませんでした。

とはいえ、活動の幅を広げたい事務所は2019年にユニバーサル・ミュージックと手を組んで「T-POPとしての世界進出」に挑戦。その際BNK48内のサブユニットとして結成されたのがLYRA(ライラ)です。

メンバーは1期生のPun、Jennis、Noeyと2期生のFond、New、Niky。デビュー曲「LYRA」の作詞作曲/アレンジ/プロデュースを手掛けたのはRichard Craker。リアム・ギャラガーの「Now That I’ve Found You」に、共同プロデューサーで関わった彼の書いたこの曲自体は素晴らしくカッコいいんですが、「T-POPというよりは普通の世界標準だなぁ」というのが僕の感じた印象でした。

そしてPunやNikyはこのグループにぴったりの属性を備えてたと思うんですが、NoeyはAKB48で言えばゆきりん(柏木由紀)的な立ち位置の、年長組でも「AKB式カワイイ」を追求し続けるタイプなので「なぜLYRAに?」という疑問があったんです。そしてその疑問通り、NoeyはBNK48の活動に専念するためLYRAを脱退してしまいます。

Noey脱退後にVYRA(ヴァイラ)と改名してリリースした曲が「Hurry Up!」ですが、ここでは作詞作曲にAMP Achariya Dulyapaiboon(2getherのエンディングテーマKan Gooの作者!)、プロデューサーにF.HEROを迎えて一気にタイっぽく寄せてきました。Music VideoにはTharnTypeのGulfくんが出演してます!

この曲がかなりヒットしたものの、今度は1期生のJennisとPunがBNK48卒業を機にVYRAからも脱退。残ったFond、New、Nikyの3人に3期生のPaeyahとPopperを加えて再編成されたのがQRRAなんです。このメンバーになったのは2022年ですが、デビュー曲リリースまでには1年の長い期間がありました。BNK48のサブユニットとしてのあるべき姿を、じっくりと検討していたのではないでしょうか。

※画像はQRRAのメディア向け資料より

上の写真左からPopper(ポッパー)、Fond(フォン)、Paeyah(パエヤー)、New(ニュー)、そしてPaeyahのひざ枕で寝てるのがNiky(ニキー)です。
ちなみにQRRAとしては初来日ですが、BNK48としてはPopperがタイフェスティバル東京2023に、Fondが2018年の紅白歌合戦に、Newが同じく2018年の紅白歌合戦と2019年のTokyo Idol Festival(TIF2019)に出演しています。

改名するタイミングで方向性も変えているこのユニット。QRRAが選んだのはK-POPへの接近です。作曲/アレンジ/プロデューサーに韓国のB-rockを迎えました。TWICEの「Perfect World」、EXOのSUHOの「Self-Portrait」、GOT7の「Dye」、NiziUの「U」といった作品に作曲とアレンジで関わっています。

タイでも絶大な人気のK-POPスタイルで制作されたデビュー曲「Miracle」ですが、日本式アイドルの可愛らしい振付、そしてタイ歌謡チックな節回しが加わる事で見事なT-POPに昇華しています。Music Videoではサビ部分の「Mi-Oh-Miracle」から始まる、メロディとユニゾンで強調されるリズムとサビ終盤の「ツッタカタンタン」となる譜割りからのメロディの動きのタイっぽさ、そこに乗る萌えポーズでお尻を突き出すキュートな振付に注目してください。
この曲にはそれぞれの国の可愛らしさ・・・「オルチャン」と「カワイイ」と「ナーラック」が、キュッと詰まっているんです。

海外の人がJ-POPを評価する声を聞く時、日本人は「え?注目するのそこなの?」という意外な感じを持つと思います。自分では意識してないけど出てしまう「日本」な部分。これは韓国でもタイでもきっと同じでしょう。

LYRAからVYRAへ移り変わる中で「タイ」な部分の重要性を再確認し、更に「BNK48」な部分も生かした。結成時からのメンバー3人のこれまでの経験に、新しいメンバー2人の未知の可能性が加わった。その上で取り入れる最先端のK-POPスタイル。僕は「QRRAでついにこのユニットは完成した」と思っています。そんなT-POPアイドルの最良の形のひとつを生ステージで体験できるイベント「T-POP Showcase TOKYO 2024」、ぜひ足を運んでみてください。

他の出演グループのMusic Videoも紹介しておきましょう。
Quadlipsは事実上このイベントが正式デビューになると思うんですが、どうやらHipHop的な音楽性の楽曲が準備されているようです。

(追記:3月11日にQuadlipsのデビュー曲「Catch Me Kiss Me」がリリースされました!)

僕はQRRAのデビュー直後に、現地タイの音楽フェスで彼女たちに会っています。

音楽フェスCat Expoのバックステージで。詳しくは前の記事をご覧ください

この時はまだ来日が決まる前でしたが、「これはいい!絶対日本でも紹介しなきゃ!」と意気込んで帰国するとFM North Waveから出演依頼があり、早速QRRAのデビュー曲「Miracle」を選曲リストに入れました。

ラジオ放送で使用する音源というのは、著作権者の権利を守るためにも正規音源でなければなりません。通常は僕が個人でiTunes Store(Apple Music内)でダウンロード購入するか現地ショップで新品購入したCD、またはラジオ局側が同様に購入してライブラリとして持っている音源を使用します。

ところが。

SpotifyやApple Musicで「このコンテンツは再生できません」になってる。この記事を書いてる段階でもまだ、日本国内でのデジタル配信が始まっていないんです。困ったぞ・・・。

こういう理由でオンエアをあきらめる曲が時々あるんですが、今回ばかりは「なんとかして放送に乗せたい!」という気持ちが勝ちまくりで。まずはBNK48支配人のチャープランのSNSから辿って、彼女の仕事依頼用のLINEにメッセージを送ってみました。

・・・返事なし。現地フェスで一度会っただけだし、日本語で書いたからマネージャーにはねられちゃったかしら・・・。

それでもめげずに、QRRAの音楽プロデューサーAehさんとその周辺の人たちに事情を説明した英文でメッセージを送った2週間後。

ピコーン!とスマホが鳴って、画面を見るとAehさんが僕のフェイスブックの友達申請を承諾してメッセージを送ってきてます!

「Hanasu iideska」

わー!!

そのままメッセンジャー通話でビジネストークが始まりました。自分の家のリビングで。

Aehさんは日本語もOKなので、僕は今ラジオと雑誌でT-POPの仕事が2つ来ていて、その両方でQRRAを紹介したい、と伝えました。

そしてAehさんが送ってくれた音源とQRRAのメディア向け資料が、ラジオ放送と雑誌、そしてこのブログの記事を書くのにめちゃくちゃ役に立ったのです。QRRAの曲名「Miracle」そのままの出来事でした

タイフェス東京でのLa Ong Fong。右端がAehさん

AehさんのバンドLa Ong Fongは僕が初めて触れたGMM以外のタイ・インディーズのひとつで、CDもほとんど買いそろえたしずっと愛聴してきました。

昨年(2023年)「タイフェス東京出演アーティストとそれを取材する人」という関係性で会った時に、ヴォーカルのOnさんから「あなたがこうして会いに来てくれた事には大きな意味があったわ」って言われたけど、本当にそうでした。

こういう不思議な巡りあわせが積み重なって、いつの間にかT-POPの検索結果で上位に来ちゃう人になってるんだもんなぁ。

こんな僕でよければ遠慮なくPR要員に使ってくださいね神様、という気持ちで毎日生きています(笑)。また次回!

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