CITY POP on VINYL 2020にPOLYCATが選出!

タイ音楽

山麓園太郎です。サワディーカップ。

今は家電量販店に行くと必ずオーディオコーナーでアナログレコードプレイヤーが売られていますね。「若い人には新しく、年配の人には懐かしい」レコードプレイヤー。

Spotifyで世界中の音楽に瞬時にアクセスすることに慣れてる人にはピンとこないかもしれないけれど、アナログレコードの時代には音楽は「所有するもの」でした。ラジオやテレビで気になる音楽がかかったら、ともかくレコードショップに行く。そして500円とか600円でシングル盤を買うと、A面とB面の2曲が聴き放題になる。自分の生活に音楽を取り入れるには金銭や情報面でのハードルが今よりずっと高かったので、その2曲が自分のコレクション(プレイリスト)に加わった時のテンションの上がり方はSpotifyの比ではなかったんです。

僕もSpotifyは活用してるので「昔は良かった」とか言うつもりは全然無いです。「アナログVSデジタル」とか「mp3がCDを滅ぼす」みたいな対立構造と、負けた方が退場するルールが嫌いなんです。2つは別のもので、長所と短所があって、ユーザーはどちらを選んでもいいし、その日の気分で取り替えてもいい。それが文化の幅ですよね?

LPで約31cm四方になるジャケットをキャンバスに見立てたアートワークは時にMusic Video以上に想像力をかきたてるし、シャッフルプレイができない仕様は逆にプレイリストに強い物語性を与えています。A面B面合計でも大体45分という再生時間も、実は人間の集中力の持続時間にピッタリ合っているのだとか。

そんな訳で自宅にレコードプレイヤーがあると音楽の聴き方に明らかに変化が起こるので、ぜひアナログレコードを体験してみて欲しいと思うんですが、現在日本のアナログレコード生産の殆どを引き受ける東洋化成が主催の「CITY POP on VINYL 2020 」が8月8日から始まっているんです。

CITY POP on VINYL
シティ・ポップに特化したアナログレコードのイベント『CITY POP on VINYL』が今年は8月5日(土)に開催決定!

画像をご覧の通り、1970~80年代のシティポップ名盤と、それに影響を受けた現代のアーティストの作品をアナログレコードで楽しもう!という企画ですが、ごく僅かながら海外アーティストも選ばれています。台湾の林以樂や落日飛車と共にタイから選ばれたのはこのブログでも何度も紹介しているPOLYCATです!

全曲日本語の歌詞と、シティポップ愛を散りばめたアレンジが日本とタイ両国で話題を呼んだ2017年のEP「土曜日のテレビ」から人気曲「君のピアス」そして「たくさんの花」をカップリングしたシングル盤です。

この「CITY POP on VINYL 2020」をきっかけに初めてPOLYCATを聴く人には、山下達郎を始めとする日本のシティポップを深く愛し、タイの音楽シーンから発したその解答がついに日本に逆輸入されるに至ったこの快挙をぜひレコードで!そして、もっと気になっちゃった場合に備えて(笑)これ以外のPOLYCAT作品をご紹介していきたいと思います。

まずは「土曜日のテレビ」。日本盤CDはFABTONEレーベルからリリースされていて、TOWER RECORD ONLINE等で購入できます。

左が日本盤、右がタイ盤。日本盤はボーナストラック3曲を追加した全7曲。ジャケットの配色も違っています
中や盤面の色もこんなに違います。タイ盤は音楽フェス会場で販売されたサイン入りのもの

これで「へぇ。POLYCATって他の曲もいいね」となった人がマストバイなのは同じシティポップ路線でタイ全土に80年代ブームを巻き起こした2016年の名盤「80 KISSES」。こちらも日本でボーナストラックをカットした「80 KISSES 2nd EDITION」が発売中です。(カットされたボーナストラックは「土曜日のテレビ」に収録)

これはもうタイムスリップしてきたとしか思えないほどの80年代感満載で、シティポップ好きな人が聴けば一生のお気に入り盤になるのは間違いなしです。「ケニー・ロギンスやスターシップを思い出すあの曲この曲が演奏されるステージには、ヤマハのシンセサイザーDX7が2台並んでいた」というライブ会場でのエピソードに膝を乗りだして反応する人もきっと多いでしょう。更にダメ押しをするとこのアルバムの1st EDITIONというのは、

こんな専用バッグに、内容は同じなのにLPレコード/CD/カセットテープの3種のメディアを収めたあまりにもマニアックな仕様でした。とにかくメーターが振り切れてる。でもこういう勢いというか徹底したイケイケな雰囲気って、まさに80年代の特徴でした。作品だけじゃなく、販売方法にまで80年代感が溢れまくっていたものだから「若い人には新しく、年配の人には懐かしい」で記録的な大ヒットとなり、POLYCATをスターダムに押し上げたのです。

そう!POLYCATはまさしくタイのシティポップシーンを牽引する代表的バンド。今回「CITY POP on VINYL 2020」の1枚に海外勢から選ばれたのにはちゃんと意味があるんです。

ここからは日本で現物を入手するのが困難なものか、デジタルリリースのみの作品の紹介となりますが、もう1枚アナログ繋がりで「I Want You」。ソノシートでのリリースでした。

封筒に入った四角いカード。よく見ると・・・
中央部分がソノシート
裏面はポストカード風のデザインに。でもこれ本当に切手貼れば送れちゃう?(笑)

Amazon MusicやApple Music、Spotifyでチェックして欲しいのは彼らのデビューアルバム「05:57」。後に「80 KISSES」へ結実する巻き戻し感を所々に匂わせながら、90~00年代の影響やレゲエ、テクノ等様々なジャンルが雑多に混じりあった作品です。

Polycatの「05:57」
アルバム・2012年・12曲

そして実は「Spotify等に置いてなくてYouTubeにだけある曲」というのもあるんですがこれがまた侮れません。リーダーのNa君はゲーム好きで、有名格闘ゲーム「ストリートファイターⅡ」の技の名前を曲名にしちゃった「Tiger Uppercut(今日は一度だけだから)」。ラップをフィーチャーしながらもバックトラックは極上のモダンシティポップ。

カバー曲にも秀逸なものが多いです。こちらは2015年のタイ映画「Back to the 90s」(原題:2538อัลเทอร์มาจีบ)のOSTをスピンオフ的にカバーしたもので、映像も映画本編ではなくこのMusic Videoのための撮りおろしです。「Different degrees」

実際の映画の予告編がこちら。ちょっと見てみたいなぁ。

番外編

POLYCATはもともと「スカ・レンジャーズ」という名前で活動していましたが、スカ・レンジャーズ時代の映画出演作が2011年のアメリカ映画「ハングオーバー!! 史上最悪の二日酔い、国境を越える」。エンドロール直前にパーティーでの演奏シーンがあるんですが大変短い上に、この映画自体がかなりお下劣にダークサイド・オブ・タイランドをデフォルメして描いてるので特におすすめはしません。

さて、ここまで駆け足でPOLYCATを紹介してきましたが「CITY POP on VINYL 2020」には他にも気になる作品が沢山あります。僕は山下達郎が参加してる「Pacific」がやっぱり気になっています。買っちゃおうかな。

細野晴臣,鈴木 茂,山下達郎 - PACIFIC
トップ・クリエーター細野晴臣、山下達郎、鈴木茂が「アイランド・ミュージック」に挑戦した名盤。YMOヴァージョンの元となる"コズミック サーフィン"収録。1978年作品。世界的名匠バーニー・グランドマンによるカッティングによるクリア・ブルー・...

あとはもう1枚、松下誠の「First Light」もCDで持ってはいるんだけどレコードでも聴いてみたいんですよね。

松下誠 - First Light (2ndプレス)
2019年10月にリリースされたアナログ・リイシューは即完売!待望のリプレスです!芳野藤丸とのフュージョン・ファンクグループ AB's の参加や、歌謡曲ヒットの担い手としても、名が知られるギタリスト松下誠。オリジナル盤そのままに、伊島薫氏に...

どうぞ皆さんもこの機会に、自宅で、レコードで、音楽を楽しんでみてください。そしてその中にPOLYCATも1枚加えてもらえたら嬉しいです!

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