STAMPと僕(2)「ラジオ番組用にインタビューしていい?」

タイ音楽

山麓園太郎です。ゲームの話題で盛り上がりSTAMPと友達になった僕ですが、アルバムリリースツアーでバックを務めたP.O.Pのギタリスト、さいとうりょうじさんともこの時以来SNSで連絡を取り合うようになっていました。(思えばこれが後の伏線に・・・)

その翌月。
僕はNaomi社長と一緒に小川真一さん(音楽評論家/ライター)のラジオ番組に出演してアジアン・ポップス特集を担当する事になりました。台湾から2曲、タイから4曲。台湾の選曲は四枝筆(Four Pens)と 盧廣仲 (クラウド・ルー)に決定。

放送中のスタジオで。不定期とはいえ、このようにアジアン・ポップスでまるまる1本特集を組むラジオ番組はまだ少ないのです。

僕はタイの選曲担当で、先月買ったSTAMPのアルバム「STH」に惚れ込んでいたので、STAMPの事をぜひ日本の皆さんに知ってもらいたい!と思っていました。じゃあ僕の得意技「中学英語で突撃インタビュー」を・・・いや、さすがに忙しいだろうから無理だろうな。でも一応またDMで打診してみよう。

「ハロー。アルバム気に入ってるよ。ラジオ番組でも紹介したいんだけど、少しインタビューしていい?」

「OK Krub (Krubは日本語だと[です]にあたります)」

うおおマジか?!
こっちも襟を正して、番組の概要を説明する文章と放送中のスタジオの様子を動画で送ってみると

「凄いね!音源やビデオ、バイオグラフィーとか、必要なものがあったら直接僕に言って」

どひーっ!
その後数回のやりとりでゲットしたインタビューがこちら。FM豊橋「ラビット・アワー」、2017年6月22日放送でした。

山麓: 最初に日本に来た時、一番ワクワクした買い物は?

STAMP: 最初の日本旅行は2010年で、僕の大学の先生とその友達と一緒にだったね。全員男でオタク。東京探検ツアーだったんだ。買い物で楽しかったのはCDとレコードとフィギュア・・・そう、凄く沢山のアニメやゲームのフィギュアを買った。あとゲームの画集もね。

山麓: 大手レーベルを離れて自分のレーベルを作ったよね?リスクもあったと思うけど、どんな事が理由だったの?

STAMP: 自分で立ち上げた123recordsに移ったから、一から再スタートを切ったような気持ちだね。その代わり今は自分にとっていい方向へ向かうために、自由に動けるんだ。いつも新しい事に挑戦したいし、それは時にはレーベルのルールに沿わない事もあったからね。(山麓注:大手レーベルに所属している頃は、コンサートで他のアーティストの曲を「今ヒット中だから」という理由でカバーするように求められたり、共演にも色々な制約があったそうです)

山麓: 最後に、”The Devil”の歌詞についてだけど・・・確かに女の子って時々小悪魔っぽく振る舞うけど、どうしてここまで悪魔の事を天使っぽく表現したの? この曲からは凄く前向きな気持ちを感じるっていうか・・・
暗闇は「行き止まり」じゃなくて「くぐり抜けるもの」として書かれてるし、曲の最後に1回だけ登場する6thコード(注:G♭6という名前の和音。古いジャズのエンディングによく使われた和音で、素朴で暖かな響きが特徴。最後以外ではもっと都会的で洒落た響きのG♭Maj7という和音が使われている)
・・・このコードの響きはハッピーエンドの比喩なんじゃないかと思ったんだけど。

STAMP: 「危険なもの」には近寄らなければそんなに恐れる事はない、といつも思ってる。だけど「本当に有害なもの」に一度引き寄せられたら、自分でそれを切り離す事は出来なくなる。ブッダが瞑想中に、美しい女性の姿になって邪魔をしに現れた悪魔の話は知ってる?ブッダは強い意志で悪魔の誘惑を退けて悟りを開いたんだけど、僕らは残念ながらそれほど意志が強くない。

それこそが僕にとっての悪魔の正体なんだ・・・「自分自身の中にある煩悩」だよ。
だからこの曲は美しいラブバラードに仕上げたけど、本当はダブルミーニングになってる。主人公は何か美しいものと恋に落ちつつ、同時に地獄の炎に向かって進んでるんだ。分かる?そしてそうと知りつつ、それを望んでるんだ。

園太郎が言ってる「最後のコード」は、確かに曲全体からするとここだけが違ってるね。その部分はこの歌の主人公の微笑みだって僕は思ってる。彼が悪魔に向かって微笑みかけている表現なんだ。

「小悪魔系カノジョ」の歌だと思っていた僕はこの答えにビックリ。
このインタビューの時点ではまだ件の曲「The Devil」のMVは公開されていませんでした。その後YouTubeで公開されたMVを見て納得。敬虔な仏教国であるタイのお国柄と、真面目な彼の人柄がわかるエピソードでした。

彼のコメントそのままが映像化されたような「The Devil」のMV。

僕のインタビューは、放送に際してトークを補足するためのものですから質問数も少ないですし、そもそも自分にインタビュアーの才能があるとは思いませんが、アーティストであるSTAMPにとってこの最後の質問はとてもグッとくるものだったようです。この後なんと、番組リスナーに向けて「こんにちは。みんなさん、僕は、タイから、STAMPです。よろしく、おねがいしまーす。」と日本語で挨拶する短い音声ファイルまで送ってくれました。

生放送当日が近づくにつれ、僕の周辺は慌しくなってきていました。新たに知り合ったのはSTAMPの私設公認ファンクラブの人達(タイ在住)。翻訳のできる方にインタビューテキストを再チェックしてもらったり、番組の公式スマホアプリの告知をしてもらったり。

「STAMPを日本のFMでかけるよ!」というのを、タイの人達にも伝えたい。双方向で情報が行き交えばどちらの国のファンも盛り上がるはず。STAMPと僕がゲームネタで盛り上がったように。そんな気持ちでした。

放送当日。
タイ国内では環境によってスマホアプリが動作しない等の問題はありましたが、番組は日本とタイのファン、そしてSTAMP本人の耳に届きました。そして放送後、STAMPとクラウド・ルーとFour Pensのメンバーがお互いのInstagramをフォローし合う、という嬉しい後日談もあったのです。

放送が終わって数日後。
僕はあるプランを思いついていました。そのお話はまた今度。

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