STAMPと僕 (3)タイフェス名古屋への出演オファー

タイ音楽

「タイフェスティバル」。
毎年全国で開催されるこのイベントを御存知の方も多いでしょう。タイ料理の屋台や雑貨のショップ、古式マッサージ等、タイ気分にひたれるお祭りです。

中でも5~6月にかけての東京/大阪/名古屋の3会場では、タイポップのアーティストが出演するライブが目玉です。僕は2015年から行くようになりました。この時は東京(代々木公園)でNeko Jump、名古屋(久屋大通公園)でFFK、どちらも当時大人気だったアイドルを見ました。

可愛い双子デュオ、ネコジャンプ。日本デビューも果たしています。
タイの10代の女の子に大人気だったFFK(Faye Fang Kaew)。アルバムはミリオンセラーを記録しています。

この他にもルークトゥンやモーラムのアーティストが大勢出演するんです。
「ルークトゥン」「モーラム」はそれぞれ、曲の節回しからよく日本の演歌と民謡に例えられる事が多いですが、実はその楽しまれ方は日本と大きく違っています。

「酒場」とか「涙」といった湿り気とは、ほぼ無縁で現代的な歌詞。
カラフルな衣装とセクシーなバックダンサー達。
とにかく賑やかで陽気。お客さんも共に歌い踊って夜を明かすんですよ。

なので日本在住のタイの人達にはこれが凄く人気なんです。アイドルや僕が好きなシティ・ポップ調のアーティストはおまけ扱い、みたいな。

で、何度か足を運ぶうちに東京/大阪に対して名古屋会場だけいつも出演者が少ないのに気が付きました。これ実は各会場ごとに主催者と後援が違うからなんです。タイ王国大使館や総領事館が主催してスポンサーも沢山付く東京/大阪に対して、名古屋は民間企業が主催。当然予算も限られてきます。呼べて2組。カラオケに合わせて歌ってもらうスタイルです。

僕も本当は慣れっこなんです。
普段から「名古屋は文化の谷間」なんて言われたりしてね。外タレが来日ツアーで名古屋だけすっ飛ばすのは日常茶飯事。でもやっぱり悔しくて羨ましくてねぇ(笑)

タイポップが好きになって、タイ料理のお店にも行くようになって、それがきっかけでタイフェス名古屋の実行委員の方と知り合ったんですよ。「名古屋にも凄い人呼びたいですね」「カラオケじゃなくて生演奏がいいっすよね」なんて話してて。
「そういえばこの前STAMPっていう大スターと友達になったんで、訊くだけ訊いてみますね~。」

2017年秋。STAMPが再び来日した際に僕と社長は青山のライブ会場に足を運びました。バックを務める、さいとうりょうじさんの計らいでリハーサルにお邪魔し、そのまま開演前の食事に付き合う事に。チェーン居酒屋で海苔巻きをつつくSTAMPに僕は訊くだけ訊いてみました。

本邦初公開のオフショット。辛い料理が苦手なSTAMPが、食事の時は自分用に別メニューを作ってもらう話をしているところ。

「ねぇ、名古屋で毎年6月にタイフェスティバルっていう大きなお祭りがあるんだけどさ」

「うん」

「もし興味があったらなんだけどさ、来年そこで演奏してみない?」

「OK!」

  

  

 え?

まさかの即答。しかもそんなに元気よく(笑)

STAMPは学生時代から行きつけのCDショップで、オーナーから先の来日前に僕の事は聞いていたそうです。日本人で、ラジオに時々出てタイポップを紹介してる変わった奴がいる、と。ルークトゥンやモーラムじゃない、君達が演奏するような新しい世代のバンコクのシティ・ポップがお気に入りで、この前も山ほどCD買って帰った。君のCDもね、と。

そしてその当人からインスタでDMが来てゲームの話で盛り上がり、ライブも見に来てくれて、ラジオで2曲紹介してくれた。だからトモダチ。

それできっとSTAMP、名古屋が日本地図でどこにあるかも知らないでOKしたんだと思うんですよ。ギャラの話もせず。僕等がSTAMPについてまだまだよく知らずに訊いたのと同じで。

このOKは、驚くべき事に契約として有効でした。
「本当かなぁ。あはははは~」と社長と口元だけ笑いながら目は驚きで見開いたままで、STAMPのショーを2階席から見たのを思い出します。

僕は豊橋に戻ると同時にタイフェス実行委員に報告し、ギャラ等の条件を聞いてみましたがやはり名古屋は予算が厳しいです。本国からバックバンドを呼ぶのは渡航費・滞在費も考えると不可能です。しかし僕には予感めいた自信がありました。さいとうりょうじさんを始めとするジャパンツアーの日本人バンドなら予算内で収まるんじゃないか、と。そして1組しか呼べなくても、それがSTAMPなら毎日TVに出てる大スターだ。ルークトゥンしか聴かない人でも絶対知ってて見たいはずだ。
もし本当に実現にこぎつけたら・・・
2018年のタイフェス名古屋は東京・大阪が誰を何人呼んだって負けない位の凄いゲストを迎える事になる。しかもバンドの生演奏で。タイフェスの歴史の中でも、特別な1回になる!

・・・こうやって妄想半分でワクワクしている間が一番楽しいですよね。でもSTAMPからOKをもらったという事は、全く素人の僕等が海外の音楽ビジネスシーンに首を突っ込んで、その契約の終了まで自分達でやり遂げなきゃならない。という事でもあったのです。

この日から僕と社長はSTAMP本人、さいとうさん、タイ在住の通訳さん、フェス実行委員とLINEやメッセンジャーを複数グループで並行して走らせながら打ち合わせに奔走する事になります。既に大変でした。後にもっと大変になるとも知らず、「やっぱり大変だね~」と苦笑いしていたのです。

次回に続きます。

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