山麓園太郎です。サワディーカップ!
ようやく2日目のレポートに入りました。これ連載記事ですので、タイドラマ方面からの検索で来られた方は第1回から読んでいただけたら嬉しいです!
目指せ!Fashion Island
Cat Expo 9 会場を駆け回った代償の筋肉痛と共に目を覚ました僕は左足に靴ずれまで見つけてちょっとブルー。「雨に降られたらホテルで丸洗いできるから」とワークマンで急遽買った飲食店の厨房用の靴でタイに来たんです。やっぱり履き慣れなかったかぁ。
楽しい2日目が始まるという高揚感はあるけど足が痛いと集中できません。大き目の絆創膏買わなきゃ。午前中にタクシーで会場近くにあるショッピングモール「Fashion Island」へ向かいました。
本当になんでもあるのでまずドラッグストアへ。大判の絆創膏買って手当OK。開場までまだ2時間あるけど、ここにいれば退屈しません。服屋を見よう。
ありえない位生地が薄くて、履き心地が軽くて涼しいデニムが760円!タイに来るといつも服を買うんだけど今日はフェスで荷物になるから我慢。ついでに楽器屋や本屋を見て回って、ご飯も食べることにします。モスバーガーなど日本のお店もあるので「かつや」に入ったけどタイご当地メニューをつい頼んじゃって・・・
ナムトックムー(イサーン料理の豚肉とハーブのサラダ)乗せのカツライス。これが容赦ない本場イサーンの辛さ。タイ料理全般大丈夫な僕も残しちゃった。おまけにお腹もビックリしたのかゴロゴロしてきちゃってトイレにこもるはめに。でもFashion Islandはトイレも綺麗だから、Cat Expoに来るなら会場直行よりまずここに来て準備整えるのが本当にオススメです!
伏線の曇り空
テイクアウトの抹茶ラテ片手にFashion Islandから会場までのんびり歩いて15分弱。今日は珍しく曇り空。空気も涼しく感じます。
屋根のある物販ゾーン全体が暗闇になってるほどの曇り。何度もCat Expoに来てますけどある意味暑さとの戦いの歴史でもあったので、今日は楽勝だ!(実は後で罠だったと分かる)早速見て回ろう。
エクスペリメンタル・ポップのBEAGLE HUGのブース。今年の夏にバンドのマネージャーから新曲「Better Than Yesterday」の音源と資料をもらったので、知り合いのラジオDJの皆さんにプレゼンしてFM North Waveさんでのオンエアに繋がりました。ご挨拶して、後でステージを観に行く約束をします。
あ!秋のジャパンツアーが大成功だったKIKIがブースにいる!
「月見ル君思フ」での東京公演でレコード買った僕を覚えててくれました。彼らも今日出演なので「絶対観に行くから!」と伝えます。
一番端っこにタイドラマの俳優Mew Suppasitのブースもあるけど、特に告知がないので本人降臨は残念ながらなさそうです。日本から来てるファンの人もいるのに~。
(実際には出演が終わった後で3分ほどブースにも立ち寄ってました!)
シティポップとアイドルがタイと日本を繋いだ
そして・・・あぁ、やっと本人に会える日が来ました。mindfreakkkです。
TBSラジオ「アトロク」2回目出演(2021年7月)で紹介した彼女の歌声。それを聴いた日本のTokimeki Recordsのプロデューサーがその声に魅了されてコンタクトし、日本デビュー曲「Sleep Party」、そして2022年2月の日本テレビ「スッキリ」での紹介にも繋がりましたが、そこに至る全てはコロナ禍の中、ネットでのやりとりでした。
「mindfreakkk !」
「エンタロウ ?!」
言葉を交わした瞬間、2人ともネット上で共有した時間やシティポップ愛が「すとん」と心のどこかに収まったんでしょう。僕と彼女はとにかくずっとニコニコしながらお礼を言い合い、僕は物販のTシャツを買って「出番は夜だよね?絶対観に行くから!」と伝えました。
最後にもうひとつ寄らなきゃいけないブースへ。Crazy Mondaeレーベルです。ここにはFEVERの元メンバーBeamとPlyを擁する生演奏ハウスミュージックバンドVINIと、やはり元メンバーBaimonとFroyを擁するアイドルグループPaintbrushが所属しています。Paintbrushのメンバーがブースに来る告知をSNSでしていたので「後で行きまーす」とコメントしておいたのでした。
アトロクの放送で使用したメンバーからの音声ファイルをここにあげておこうかな。まさかの全編日本語歌詞でリスナーを驚かせたデビュー曲「Young Soul」の告知でした。(2022年5月)
一番日本語が上手そうなBoちゃんに「こんにちは!」と声をかけると僕のコメントを見てくれてたみたいで「ほんとに来てくれた・・・」と感激している様子。そりゃ来るよ。君たちに会いたかったんだから(笑)
一番日本のアイドルに近い雰囲気を持ってるのは櫻坂46が大好きなFroyかなぁ。アニメ好きのBaimonはちょっと人見知りでシャイな感じ。Fahsaiはアイドルへの憧れはそんなに無いみたいだけど、それがグループの中では「普通のタイの女の子」感を出していて良いバランスになってると思う。そしてBoはJ-POPなど日本文化が大好き過ぎて日本語が上手になっちゃったので普通に日本語で会話ができます。いつかPaintbrushで来日したらそれを生かして日本のアイドルファンのハートをつかむでしょうね。
Boちゃんがいるから安心して日本語で「グッズは何があるの?」と訊くと「ポスターとフォトセット、缶バッジもあります!」とのこと。ポスターケース日本から持って来れば良かったなぁ。
「今日は缶バッジにするね!あと、VINIのCDも買います」と言うとBoちゃんが「あ、VINIも来ましたよ」と。え?
うわー!DJ/キーボード担当のBeam(元FEVER)とギターのFhong(カッティングが凄い上手い)来た!ファファファファンです!と単にデレデレしたい気持ちをこらえて努めてクールに「日本のラジオDJのエンタロウです。VINIをラジオで紹介したので日本にもファンが沢山います。いつか日本でライブしてください!」と言って名刺を渡しました。
Boちゃんが「エンタロウさん、VINIのCDにサイン要りますか?」って気をきかせて訊いてくれたので「はいっ!お願いします!」と即答。
何て良いタイミングで来たんだ・・・ありがたや~ありがたや~。
FEVERのメンバーたちにとってコロナ禍が原因の突然の活動終了は羽をもがれたように辛いことだったに違いありません。でもこうして新しい場所で活動を続けるメンバーがいて、芸能界に残らなかったメンバーもそれぞれの毎日の中で笑顔の写真をインスタにあげたりしてる。
それに日本から「いいね!」をつけるのは、僕にとって「忘れてないよ。ありがとう」みたいな意思表示であり、彼女たちの胸の中にあるFEVERの残り火が消えないように薪をくべる作業です。火さえ消えなければ、何かの拍子にポッと灯って胸を暖める時があるかもしれないですからね。
そんな彼女たちの新しい活動も応援していきたいです。PaintbrushとVINIをいつか日本に!
さぁ、STAGE1にBEAGLE HUGを観に行こう。
この曲「Better Than Yesterday」の歌詞はヴォーカルのAeyさんの思い出から生まれたものだそうです。
おばあちゃんのところに行く度、「今日の調子はどう?元気?」と聞くと、おばあちゃんは「昨日より良いよ!」といつも答えてくれていました。このおばあちゃんの言葉がこの曲のきっかけです。「今日には私とあなたがいる。そして、昨日より良い!」-Aeyさんのコメントより
メンバーが好む音楽ジャンルはそれぞれ違っていて、そこからの影響がバンドに投影されているそうですが、その結果生まれるサウンドスケープがとても印象的なバンドです。耳元で左右に動く音と遠くに置かれた音の質感、そしてその空間を月の光のようにそっと押し開く凛としたヴォーカルをぜひヘッドフォンでじっくり聴いてみてください。
いつも真面目なSTAMP
ステージ3ではSTAMPが間もなく始まるところです。
既に次回(2023年)のCat Radio関連のイベント開催予定が大型モニターに表示されています。コーンケン(タイ東北地方)でもCat Expoが開催されるようになりました。バンコクで生まれた現代タイポップスが地方都市にも人気を広げつつあるのでしょう。BNK48の握手会で「東北地方のチャイヤプームからバスに数時間揺られて来た」というファンと話した僕には、コーンケンと自分が今住んでる愛知県が結構重なってしまいます。見たいライブがいつも東京か大阪だ・・・という。たまに名古屋に来てくれると奇跡だと思うもん(笑)。
僕が今立ってるこの場所は出演者の控えテント前です。ほーらいたいた。DJ Sonnyも一緒だ。
すぐに準備が整い、STAMPはステージに駆け上がって行きました。その後はいつもの真剣勝負の、でも楽しくてチアフルなSTAMPの時間。
STAMPのライブって満足保証付きなんです。日本やタイでもう10回以上ライブを見てるけど、それが小さなライブハウスでもビアガーデンのゲストでも、彼はお客さんがいる限り毎回全力で楽しませにくる。仕事場からのリモート配信なのに、始まる直前にブレスケアをシュッシュしてたのも見たことある。直接対面してなくても自分のファンが画面の向こうにいるならいいかげんな自分は見せられない、というこの真面目さとプロ意識が彼を国民的スターにしたんだと思います。
ステージを終えて控えテントに降りてきたSTAMPに手を振るとこちらにやってきました。「STAMPお疲れ様!」5月にTBSラジオに一緒に出て以来だから話したいこともあったけど、あっという間にファンが集まって来ちゃって、
サインと2ショットの行列が。ここでも彼は時間が許す限りファンのリクエストに応えていました。
Mew Suppasit降臨!
STAMPは帰りましたが、次のステージのスタンバイ中に同じ場所がざわついています。
確かこの後の出演がMew Suppasitでは?
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いた!なんかすげースターのオーラ出てる!
タイドラマは特に追ってない僕にも伝わる、ひと目でわかる芸能人の佇まい。
これがタイのイケメンか!
では僕が撮ったMewの写真ほぼ全部アップします。ステージ中の写真はたくさんネットにあるけど、控えテントでの姿を捉えたものは殆ど出回ってないからファンの皆さんにはそこが見どころかな。どうぞ~!
ここからはステージショットです。
この後ステージ1へ。僕が雑誌「BRUTUS」で島村一平さん(文化人類学者)と「モンゴルとタイのアイドル」をテーマに対談した時に具体例として挙げた4EVE。ヒップホップやK-POPやアイドルっぽいテイストをミックスした「これぞまさにT-POP」と呼べるガールズグループです。
会場にあふれる自由とリラックス
Cat Expoの会場は見慣れてるはずなのに、今日は何もかもが違って見えます。曇り空のせいで落ち着いた色合いの会場は例年よりチル味を増し、物販ゾーンに明かりが灯り、夕やけが始まると例年になくロマンチックな風景に見えるのです。
野外フェスといってもバンコク近郊で、クルマがあれば休日のドライブ感覚で訪れることができるCat Expoはバンコクの若者のデートスポットでもあります。もともとアウトドア系の服装は少なく、気合の入ったコーデで来る人が多いですが朝から涼しかったので今日はそんな人が2割増し。
みんなオシャレ。スカート穿いた男性もいれば男女じゃない組み合わせのカップルもいます。寛容なお国柄とはいえ偏見がないわけじゃない。でも今日、ここでは皆が自由に、本当の自分でいられる。
ここに来るたびに「なんか平和でいいフェスなんだよな~」と思っていたんですが、きっと自分も他人の自由も尊重できる「大人な音楽リスナー」を、Cat Radioがこのフェスを通じて育ててきたんじゃないかな。
と思いながら歩いているとLast Idol Thailandのブースにアイドルっぽくない人が寛いで座ってる(笑)。見覚えのある顔だったので挨拶に行きました。Patchaです。
彼が以前やってたグラムロック・バンドChanudomのCDが凄く良くて、何年か前のCat Expoで会った時に一緒に写真撮ってもらったのでした。今日は自分のレーベルのブースの隣(Last Idol Thailand)が空だったので広々と使わせてもらってたみたいです。また一緒に写真撮ってもらった。
現在はソロ活動で、「もうすぐ新曲が出るから聴いてみて」と言われました。それがこれ。
彼はもともとミュージカル俳優なのでダンスもキレッキレ!実は色々と激しい歌詞なんだけど、TikTokで軽くバズってました。
HYBSのステージ中にフェスの神様が降りて来た
この日のステージ2は機材トラブルでスタートが大幅に遅れて、タイムテーブル上はMew Suppasitや4EVEとまる被りであきらめていたHYBSが観られそう。ダッシュ!
今タイポップスの中で特に旬のアーティストが彼らだと思います。8年間疎遠になっていた友人同士が同じ音楽の趣味で意気投合して結成したというスタート、シンセポップとR&Bをミックスした音楽性、英語の歌詞による洋楽感、全てがタイミング良くタイや東南アジアのリスナーに刺さったというか。しかも現在のプロデューサーはTELEx TELEXsも手がけた人ですから手腕は折り紙付きです。
タイポップスでは「英語で歌詞を書いた方がストレートに自分の音楽を表現できる」と言うアーティストが少なくありません。声調によるメロディへの制約が無いので、特に洋楽に影響を受けた世代は作曲面で自由度が高いのでしょう。リスナーも若い世代を中心に英語を話せる人が多いから僕たち日本人が思う以上に英語の歌詞を受け入れているんだと思います。
ステージ前には沢山の観客がつめかけて一緒に歌ったりしていますが、ステージ全体を写真に撮ろうと後ろに下がると、そこにはこんな風景が広がっていました。
・・・「フェスに期待するもの」ってありますよね?観たいバンド、聴きたい曲、食べたいフェス飯、風景、それから涼しいといいな、とかあの人と一緒に聴きたいな、とか。
それが全部あった。
時間が押したせいで夕やけのマジックアワーが訪れて、空に吹く風は優しく涼しくて、ステージの照明と風景が織りなす配色はゴキゲンで、踊りたければ前に行けばいいし後ろでまったり聴いてもいい。飲酒ゾーンからお酒は持ち出せないから酔って騒いでる人もいない。何組ものカップルが芝生に腰を下ろしてフード食べて幸せそうにしてる。今いちばんイケてるバンドをそんなタイの若者に交じって僕は聴いてる。こんなのなかなか無いんだよ。こんな完璧に全部揃ったシチュエーションって・・・
僕も同じ目線になりたくて、芝生に直接座ってみます。
うわぁ・・・良い・・・良いなぁ・・・これ今までの人生のリスニング体験でベスト5だ。旅費が値上がりして大変だったけどタイに来て良かった・・・。
初めて来た時から、Cat Expoに来るタイの若者に僕はずっと尊敬の念を抱いています。音楽が心の底から大好きで、オシャレで、凄くマナーが良くて。
学歴社会で軍事政権のこの国での暮らしは、決してお気楽な毎日じゃないはずなのに。
・・・だからこそ彼らにとって音楽とCat Expoは聖域なのかも。だったら今この瞬間みたいに、神様が降りてきてるとしか思えない気持ちになっても不思議じゃないな。フェスの神様、ありがと!
皆さんもこの会場にいるつもりでHYBSのMusic Videoを見てみてください。
「Dancing with my phone」80年代AORのムード漂う良曲。身体を揺らしながらバンコクの街並みにタイを感じて欲しい。
「Run Away」全編韓国ロケによる彼らのコミカルなドタバタ逃走劇も楽しいアップテンポなナンバー。ここで見られるオーバーアクションはステージパフォーマンスにも取り入れられて観客を沸かせています。
「Would You Mind」胸をふるわせるストーリーが、窓から差し込む暖かな光のような曲調に見事にマッチ。ロケ地はGrind coffee co. という高速道路沿いのカフェ。電車の駅からは遠いんだけど行ってみたくなりますね。
Cat Expo 9 レポート、次回はとうとう2日目の夜の部へ突入します!
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