「カワイイルークトゥン」爆誕!BNK48「ドートディドン」

タイ音楽

山麓園太郎です。サワディーカップ。

僕が普段探検しているタイポップスは「バンコク・シティ・ポップ」と言い換えてもいい、洋楽テイストの強い都市音楽ですが、実はかなりニッチな市場です。実際のタイの音楽シーンにはこれを軽く飲み込む勢いの「ルークトゥン」や「モーラム」の市場があり、特にルークトゥンは本当の意味でタイを代表する音楽ジャンルだと言ってもいいでしょう。

ルークトゥンやモーラムについては既にSoi48さんによる名著「TRIP TO ISAN 旅するタイ・イサーン音楽ディスク・ガイド」がありますので僕が何を言っても蛇足ですが、凄くざっくり説明すると「音楽的には日本の演歌や民謡っぽいけど、その楽しまれ方は日本のそれとは全く違い、コンサートでの大音量や派手な舞台装飾、セクシーなバックダンサーらが織りなすムードはレイヴや祝祭を思わせる」という感じです。

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日本ではJ-POP・J-ROCKと演歌・民謡の間になんだか深ーい溝がありますよね。「演歌なんてお年寄りが聴くもんだ」VS「何歌ってんだかわかんないわ」みたいな世代間断絶がある。氷川きよしさんだけが辛うじて間を繋いでる気がする。一方タイではルークトゥンは若い世代にも人気なんです。

BNK48はそんなタイの中でもニッチな都市音楽の中の、更にニッチなアイドル市場の、更にニッチな日本式アイドルとしてスタートしながら「恋するフォーチュンクッキー」のスーパー大ヒットで国民的スターの座に昇りつめた稀有な例なんですが、昨日(2020年1月15日)公開されたばかりのルークトゥン調の新曲「ドートディドン」のMVがわずか10時間で100万回再生!これまでのMVで最短記録なんだそうです。(記事を書いてる間に200万回超えました。その後も伸び続け、公開6日で700万回に。そして2022年1月の段階では1億7千万回!

これ、従来のファンの中に「え~?演歌ぁ~??」って言う人もいないし、BNK48ファンじゃなかった人も「今度のBNK48はいいね!」と思って見たからこそのスピードだったと思うんです。

実際のルークトゥンはもっとコブシが効いてるので、「ルークトゥン調」ではありますけど、曲中で鳴り響くエレクトリック・ピン(これまたざっくり説明すると「電化三味線」)も、いちいちパンチの効いたリズムのキメもまさしくルークトゥン。とどめに曲の最後でルークトゥンの大ヒット曲「Number One」のフレーズを引用する茶目っ気もいいですね!

そして何より凄いのは「BNK48としてのスタンスに全くブレがない」ことなんです。

ルークトゥンのステージ衣装はオープンなお色気が特徴的。胸元はデフォルトで大きく開いてるし超ミニスカートかホットパンツが主流。それに対してBNK48は、ここでも普段の楽曲同様の日本式カワイイスタイルを守っています。

振り付けもセクシーさを極力排したもので、腰の動きは曲の最後以外は横方向に限定されているし、それも二段/三段のフレアスカートの着用によって目立ちにくくなっています。

タイが誇る大衆芸能としてのルークトゥンに敬意を払いながら、あくまでアイドルの立場でこの曲に向き合ったBNK48に、おニャン子クラブにおける城之内早苗の「あじさい橋」を重ねるのは、いささかこじつけが過ぎるでしょうか。

「ルークトゥン=セクシー」のイメージが強い中、史上初かもしれない「カワイイルークトゥン」に辿り着いたBNK48。ひょっとするとこの曲、「恋するフォーチュンクッキー」同様に彼女たちの代表曲になるかもしれません。

余談ですが、このMVで強烈な存在感を放っているデコトラ(アートトラック)。調べてみたら主に国境間の物流の現場で、実際にタイでも走っているのだそうです。

TELEx TELEXsのギタリストNow君もFEVERのBaifernちゃんも、デコトラを題材にした日本のゲーム「爆走デコトラ伝説」(プレイステーション)で子供の頃遊んでいたと証言しています。BGMの演歌はタイ版でもそのまま使われていたそうです。ゲームの中で異国のルークトゥンとして日本の演歌を聴いていた2人も、このMVを見てきっとハイテンションになっていることでしょう。そんな訳で次のBNK48のシングル「ハイテンション」は今春発売予定。

「ドートディドン」もカップリングで収録されますが、既にApple MusicやSpotifyではリリースされていますので聴いてみてください!

BNKTYOさんでは街頭プロモーションの記事が読めます!曲名の由来も!

さらに歌詞の日本語訳の記事も載りました!

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