山麓園太郎です。サワディーカップ。
ラジオやイベントで「タイポップス探検家です!」なんて挨拶をしてますけど、いつから探検が始まったかというと2012年です。
僕は海外へ行く度に現地のCDショップを回ってますが、中華系でもボリウッドでもベトナムでも大抵その国の音楽は、どこかその国のムードを漂わせるジャケットと音になっているものです。
ところがタイで初めて見かけたCDは、ジャケットからして何かが違いました。
「これ何?日本のCDみたいだ」が第一印象。表通りから1本入った通りにあった「B2S」という本と文具とCD/DVDのチェーン店(現在はCD/DVDの販売から撤退)のレジ前。「デートなう。に使っていいよ」みたいなこの構図。7月のバンコクですから外はそりゃもう暑くて、でもこのジャケ写を見る僕は涼しいカフェの店内で、言葉の通じない女の子と何故かお揃いのケーキにフォークをさしているのでした。
タイポップスってどんな感じなのかな。このジャケットで中身が「ビヨ~ン」みたいな民族音楽っぽいわけないもんな。そもそもジャケ買い上等ですからこの女の子を起用した段階で僕に買われるのは決まりきってたとはいえ、ジャケ並みにインパクトがあったのはその値段です。
右下に「250バーツ」って書いてありますけど、これ当時のレートだと大体600円位です。「CDアルバム1枚600円?!」しかも2枚組なのに更に安い199バーツのもあります。それでいきなり5枚買って宿に帰ったんです。日本でCD1枚買うお金で5枚買えたんですよ、当時は。
帰国後に判明したんですけど、件のキュートな女の子が微笑むこのCD「LAZY SUNDAY 2」はレコード・コレクターでもあり日本のシティ・ポップに早くから着目していた音楽プロデューサーKrit Krisanavarin氏によるカフェ系ポップス企画盤。その横の3枚は大手レーベルGMM Grammyのヒット曲集で、これらも洋楽の影響が色濃いもの。一番右端もオシャレポップスを量産するLIVIN’ Gのスロー&メロウなバラード集。タイ語で歌われている点以外、何もかも洋楽です。
翌日はMBK(マーブンクロンセンター)の中にあったCDショップ「mangpong」に行き、カタコト英語で「タイ・ミュージック。ポップス・ヒットチャート。フィメール・シンガー」なんて言ってオススメを訊き2枚追加。
つまり試聴すらせず7枚ジャケ買いして、帰国してから聴いたら偶然にも全部シティ・ポップ系。 タイにはルークトゥンやモーラムという巨大音楽ジャンルがあるのを知らなかった僕はこの7枚をタイポップスの全てだと思い込んだわけです。
もし最初のタイ音楽体験がルークトゥンだったら、僕にとってタイの音楽は他のアジア諸国とざっくり一括りにしたエキゾチック趣味の一環で留まっていたと思います。僕はその位シティ・ポップ中毒で、初めてのバンコクが思いのほか大都会だったことに驚き、シティ・ポップ探索レーダーがバリ4で作動してたんです。きっと。
中でも「LAZY SUNDAY 2」のホーンとストリングス・アレンジ、そしてギターとキーボードの音色は特にシティ・ポップ度が濃くて、僕は凄いデジャヴ感に笑いながら感動して毎日ヘビロテしたんですけど、1曲とても印象的な声の人がいたんです。Lula(ルラ)。
少し鼻に抜ける、優しく囁くような歌い方。「一度聴いたら忘れないタイプの声」の人っていますよね?ジョン・レノンやリアム・ギャラガーや細野晴臣さんみたいな。仕事帰りにこのCDかけているといつもLulaの曲で疲れがスーッと抜ける。そして2日目に買ったCDこそがLulaのアルバム「JOY」でした。レコメンドしてくれた店員さんありがとう!
当時まだiTunesにも手を出さずにフィジカル至上主義を貫いていたんですけど、Lulaが大好きになっちゃったからなんとかCDが日本で買えないものか、と調べまくってサワディーミュージック、ついにはeThaiCDまで使って取り寄せ始めました。参加作、カラオケDVD、ビデオCDにまで手を伸ばし、タイに行けばCDショップを回る。あっという間にほぼコンプリート。初めてデジタルダウンロード購入したのもLulaでした。
Lulaは大学生の頃に「2 Become 1」というユニットでデビューするも、アイドル的な売り出し方になじめず引退。会社勤めをしながらレストランで時々歌ったりしているうちに評判となり再デビュー、という経歴です。
特にボサノヴァを歌うとこの声がピッタリで。同じウィスパー系のクレモンティーヌともカヒミ・カリィともまた違う。地声とウィスパーを自在にミックスできるんです。彼女はこの歌唱法を 2 Become 1以降に確立するんですけど。
再デビューから10周年の2018年にはRose SirintipやSTAMPら大物ゲストを迎えた初のソロコンサートを実現。
最近ではエレクトロニカな曲や他アーティストとのコラボにも積極的。曲によっては歌い方を地声に戻したりして、常に新しい表現に挑戦しています。
「YOUは何しに日本へ?」で有名になったStevenさんが大貫妙子さんに恋い焦がれたように、僕もLulaの歌声に惹かれてタイポップス温泉(沼じゃないよ)へ入って行ったんです。だから2017年のCat Expo 4に彼女が出演し、友人のDJがスタンバイ中の彼女を呼んできてくれた時には
挨拶しただけで後は泣きっぱなしという醜態を・・・(笑)
いつかもう一度再会を果たして、今度こそちゃんと「タイポップスの世界に迎え入れてくれてありがとうございます」とお礼が言いたいです。
海外のポップスに触れるきっかけは、現地の音楽ショップだったりYouTubeだったり人それぞれだと思いますけど、僕はその最初でLulaのようなシンガーに出会えてラッキーでした。言葉がわからなくても、どこの国でも、皆さんがアジアの音楽に興味を持って探し始めた時に、この先ずっと追っかけたくなるような人に出会えますように。
コメント
サワディーカップ!
このブログで、Lulaの、2 Become 1からソロ再デビューの経緯を知ることができたのは
うれしかった!
・一度聴いたら忘れないタイプの声
・最初でLulaのようなシンガーに出会えてラッキーでした
という管理人・山麓さんの感想は、私が感じたものとピッタリいっしょ!
今では、たくさんの歌手の歌を聞くけど、「印象に残るタイプの声」
といったら、Lulaを挙げるだろう。 好みの問題なんだけど、、、
STAMP来日の立役者の方だったんですね!
Hiro(ヒロ)さんだとばかり思っていましたが、、、
たぶんお知り合いでしょうけど。
これからもタイポップスの拡散をヨロシクお願いします!
ありがとうございます!
STAMP来日の時にはHiroさんにも多大なる協力を頂きました。
文才は無いんですがキャラだけは立っているので(笑)、これを生かして
タイポップス拡散をシーンの隅っこの方で長く続けていけたらと思っています。