ジュニアアイドルから大人バラードの名手へ。Praew Kanitkul

タイ音楽

山麓園太郎です。サワディーカップ。

今回ご紹介するのは歌手/女優のPraew Kanitkun(プラーオ・カニクン)です。前の記事で紹介したKatie Pacificの協力を得て、僕がメジャーレーベルで活躍する歌手にインタビューをしたのはこれが初めてのことでした。2015年のクリスマス直前に、ラジオ番組用に行なったものです。

Praew Kanitkulってどんな人?

1984年生まれの彼女は1997年、13歳の時に男女2名ずつの4人組アイドルグループ「X3 SUPER GANG」の一員としてデビュー。
これは今でもカバーされたりしてる代表曲「L.O.V.E」ですが、スレスレまで攻めたオールディーズオマージュが炸裂しています(笑)。

もう1曲、コンサート映像のMVも紹介しましょう。

まだ歌声には不安定な所がありますが、ポップで、元気で、はじける笑顔が当時の彼女のチャームポイント。デビューアルバムは大ヒットを記録しました。

1999年の解散後は学業に専念して大学へ進学、在学中の2004年に再始動してKennet名義でアルバムを発表しますが、なんとこれが鳴かず飛ばずだったそうです。ところが女優に転身しながらドラマの主題歌等を担当するうちに人気が再燃し、6年後の2010年、前述のKennet名義のアルバムに新曲を追加して「Melody of Praew」として再リリースするとこれがロングヒットを記録します。

「Melody Of Praew」

そしてその間に彼女は大人のバラードを情感たっぷりに歌いこなす一流の歌手に成長していました。そのアルバムから1曲、「Forget」のMVをどうぞ。

このMVでは髪型はアイドル時代と同じですが、歌声がすっかり変わっています。カレン・カーペンターを良い意味で軽くして、少しハスキーにしたような落ち着きのある中低音と、切なげなハイトーン。どちらもとても魅力的です。

僕は「Lazy Sunday 2」で彼女の歌声に惹かれ、ディスコグラフィーを集めていきました。そしてKatie Pacificとフェイスブックで繋がった時、KatieがPraewのwerkgangレーベル時代の作品でアートワークやMVのディレクターを務めていたことを知ります。そのご縁で彼女が僕の質問をPraewに届け、英訳して返してくれたのでした。

Praew Kanitkul インタビュー
(インタビュアー:山麓園太郎/英語翻訳:Katie Pacific・初出:2015年12月17日 FM豊橋「ラビット・アワー」)

山麓 : デビューのいきさつについて教えてください。
Praew : 小学生の頃、GMMレコードの歌手が歌うのを聴いて、私はGMMという会社が好きだと思いました。そこで母に、GMM本社へ連れて行ってもらうよう頼みました。そして母と2人でアポ無しでオフィスに入っていき、オーディションが受けられるか尋ねたのです。それで私は「X3 Super Gang」というグループのメンバーとしてデビューしました。


山麓 : あなたはタイの芸能界で長い間ご活躍されています。
その中で、最も幸せな思い出はなんですか?

Praew : キャリアの最初期に、子供向け教育番組に出演して歌いました。今も当時の歌で小さな子供たちが文字や数を学びます。大人になった今、彼らと一緒に歌えるのはとても幸せです。


山麓 : 今、一番興味がある事はなんですか?
Praew : 幸福の追求。楽しんで自分の人生を生きる方法を探す事。私は自分が経験する事全てを愛しています。それは私を成長させてくれるものだからです。具体的には来年の春(放送当時。2016年にあたる)に直島(瀬戸内海にある、島全体がアートスポットになっている観光名所)へ友人と旅行して、島を自転車で回る予定があります。今はそれが楽しみ!


山麓 : 今から10年後、あなたはどうなっていると思いますか?
Praew : 将来どうなるか、自分ではわかりません。若い頃は、きっと25歳になったら歌手をやめて、何か他の事をするのだろうと考えていました。25歳になった時は、きっと30歳になったらやめるだろうと思いました。今私は31歳(放送当時)で、まだこうやって歌っています(笑)。
私は歌が好きで、歌う能力も身につけています。いつのまにか、歌う事が人生の一部になっていたんです。だからいつか結婚して母親になっても、歌っていられたら嬉しいですね。

山麓園太郎
山麓園太郎

レコード会社をノーアポ訪問、と聞いて僕は勝手に親近感が跳ね上がったのを覚えています(笑)。この一件がなかったら彼女は芸能界にいなかったかもしれないのです。お母さんグッジョブ!

しっとりしたバラード曲が多いPraew。リラックスしたい時に

これからPraewを聴く人にオススメしたいポイントは、「美メロの名曲バラードが多い」ということです。彼女のレパートリーはGMMのソングライティングチームが書いた曲やGMM所属スターのカバーが多いんですが、大手レーベルの底力というか、本来ならアルバム一番のキラーチューンとして扱われてもおかしくないような印象的なメロディーの曲が1枚のアルバムに凝縮されています。ドラマの主題歌を多く歌っているんですから当然ですね。いくつかオススメの名バラードをご紹介しましょう。

「how much don’t remember」。ドラマのOSTですね。
「If You Go」。大学の映研を舞台に、もう戻らない恋を描くMVです。これもドラマのOSTになりました。
「Don’t Trust Yourself」。俳優/歌手Teerapat Sajajakulの2001年のヒット曲のカバーです。

Praew KanitkulをSpotify やYouTubeでチェックしてみよう

J-POPのアルバムではヒットシングル曲を柱に、アルバム用に新しく書き下ろされた曲が何曲も入るのが普通ですが、タイではシングルを10曲位リリースしたらそれをまとめてアルバムにする、というスタイルが主流です。ですので「出るアルバムが自動的にベストヒット集になる」わけで、収録曲にはハズレがない反面、「ここでしか聴けない曲」がないのは寂しいところです。

「Hit Collection」

日本で「ベストヒット集」がリリースされる時は、それこそ竹内まりやさんの「Expressions」のようにデビュー何十周年という節目で、豪華ブックレットが付いて、レア音源も入っていたりして、買った時なんてそりゃもうテンションが上がるもんですが、Praewのこのヒット集はなんと一枚紙のペラジャケット。歌詞すら載っていません。まぁ値段は199バーツ(日本円で約680円!)でお値打ちなんだけど、コレクターズアイテムとしてもう少し凝って欲しいなぁ・・・という気持ちはありますね。

もちろん「CD」という形にこだわらなければSpotify等の配信サービスで彼女の作品は一通り聴くことができます。オススメはやっぱりブレイクのきっかけになった「Melody Of Praew」と、オールタイムベストの「Forever Love Hits」かな。

もちろんYouTubeにもMVが沢山公開されています。バラードばかり紹介してきたから、それ以外の曲も聴いてもらいましょうか。このMVの撮影を取り仕切ったのもKatie Pacific。Praewは撮影現場にこの青白のギンガムチェックの衣装や花のブローチを持って現れ、メイクも全て自分で行なったそうです。

「I Don’t Wanna Be Close To Loneliness」。恋のキューピットが恋に悩む可愛いMV。

最後にご紹介するのはこちら。歌詞の日本語訳がついています。

「Everything But You」。2014年のTVドラマ「Cubic」のOST。MVにもドラマ映像が使われていますが、なんかストーリーが波乱万丈過ぎて全然日本語歌詞が頭に入ってきません!(笑)

このGMM InternationalのYouTubeチャンネルは「海外戦略として字幕付きでMVを公開してみるよ!」という意気込みで始めてみたものの根気が続かなくて(笑)更新がすっかり止まっちゃってるけど、日本語訳で2010年代半ばまでのタイポップスが結構沢山楽しめるチャンネルです。メジャーレーベルのタイポップスがどんな感じなのかよくわかるので、興味のある方はぜひ探検してみてください!

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