タイポップス方面からタイドラマ人気を眺める -Shooting Star Asia Tour in Japanを体験して-

タイ音楽

山麓園太郎です。サワディーカップ。

昨年タイフェスティバルの広報をお手伝いした時にタイ大使館の人と「タイポップスとタイドラマのファン層はそれぞれ独立していて、互いにリンクしていない」という話をしたことがあります。

いま日本に紹介されているタイポップス(T-POP)はその多くがインディーズレーベルで、音楽ファンからは「タイのこのバンド知ってる?」的な感じでニッチな楽しみとして捉えられているのに対して、タイドラマ・・・例えばGMMTVの作品であれば当然音楽はGMMとその系列、つまりメジャーレーベルのアーティストの楽曲が使用されてドラマの映像やストーリーと共にもれなくファンの耳に届きます。2getherのScrubb(インディーズ所属)は珍しいケースにあたりますね。

メジャーとインディーズの間に特に壁がある訳ではないんですが、日本での紹介のされ方や認知度には大きな差があります。

これが将来リンクしてメジャーとインディーズ、あるいはタイドラマとタイポップスで両方ファンが重なるのが良いのか、それとも旅行ガイドの見出しみたいに「タイドラマ」「観光スポット」「グルメ」に加え「音楽」の項目が生まれてそれぞれは独立したままで良いのか、まだ自分の中で答えは見つかりません。

僕はタイドラマについては殆ど知識ゼロで2getherすら未履修、タイドラマ人気も現象として傍観してる状態で、何か貢献したとすれば唯一TBSラジオ「アフター6ジャンクション」にSTAMPと共にタイフェスティバルオンライン2022のプロモーションで出演した際にドラマ「F4 Thailand」の主題歌「Who am I」をオンエアした位です。

しかしそのご縁でF4 Thailand主演の4人の来日公演「Shooting Star Asia Tour in Japan」にご招待頂きました。ところが僕にとってタイドラマ関連のイベントは初参加です。しかも開催4日前に突然お誘いを受けたので何の準備もしてない。

これはいかん!と慌ててCSで録画したままHDDに眠っていた「F4 Thailand」をエピソード0だけ見ました。放送前の予告編的なやつですね。全然予習になってないよそれ!大体Twitter見てて出てくるAstroって何だ?と思って調べてあーなるほど!っていう、その位の知らなさ加減。

仕方ないのでせめてF4の4人やファンの皆さんに失礼がないように当日朝からタイ製品で身を清めました。シャンプー・洗顔フォーム・シャワージェル。昨年末に買って帰ってきたものです。中でもSNAKE BRANDのシャワージェルはタイ定番のタルカムパウダーの香りで使い心地が良いのでオススメ。僕はWatson’sで見つけました。

会場は横浜のぴあアリーナMMです。開場30分前に到着すると既に長い列ができており静かな熱気をはらんでいるので、

ああぁぁ僕みたいなのがのんきにやって来てホントにごめんなさい!って感じで関係者受付を訪ねると外で見た長い列をすっ飛ばして一瞬で会場内に通されてしまいより一層申し訳なさが際立ってきます。

しかし勝手にアウェイ感を感じてるのは僕だけでファンの皆さんはグッズのトレーディングやギブアウェイ、そして開演前の身だしなみチェックに余念がありません。皆さんオシャレして来ています。

開演すればたとえ客席とステージに距離があろうとも「推しと私だけの時間」。なるほどこれは実質デートなのか!甘酸っぱいデートなんだな?!

とすれば後は若いふたりに任せて(お見合いか!)いや若い3人かもしれないし若い5人かもしれないけどまぁとにかく!僕はちょっと離れて見守りながらこの恋を応援しようじゃないですか。奇しくも席は2階スタンドの前の方です。会場全体が良く見渡せます。

開場直後の風景。この後アリーナから4階まで席が次々埋まっていきました

コンサートの幕が開くと1曲目が「Who am I」で、さぁ困ったぞ、と思いました。だってラジオでかけたこの曲以外ちゃんと聴いてないんですから。この後ずーっと知らない曲が続くことになるぞ・・・と思っていたら予想外の事態になりました。

どの曲も、10年前に僕がタイポップスにハマった頃の記憶を呼び覚ましてくれたんです。

最初に買ったタイポップスのCDがGMMのコンピレーション盤で、2年程GMMを中心にメジャーレーベルを追ってから僕はインディーズレーベルへ興味を移していったんですが、GMMの楽曲が持つ肌触りみたいなもの・・・まさしくGMMというブランドの「色」ですが、これが当時と変わらないままこの場に現れたんです。

GMMはタイの音楽シーンで1970年代からいち早く洋楽のカバーや欧米のヒット曲の要素を導入した曲を歌っていたThe Impossiblesというバンドのメンバーが作った会社です。特に1970年代ポップスや1980年代のAORから吸収したものが、今もGMMの楽曲のコード進行やアレンジに応用されていると僕は感じています。

そうだなぁ、例えばコンサートでWin君が歌った「Silhouette」という曲ですが、

ピアノが導くイントロ、要所要所でメロディを補強するガットギター、中盤からじわじわ入ってきて後半で音数が増えるドラムとベース、感情を揺さぶるストリングス。古くは1972年、カーペンターズの「Goodbye To Love」や1975年、エリック・カルメンの「All By Myself」から続くピアノ・バラードの系譜です。コード進行も最近のヒット曲の主流である「4つ~8つ位のコードを循環させてヴォーカルや楽器の抜き差しで変化を付けてゆく」タイプとは違い、もっと繊細な起伏があります。

さてこれを約10年前のGMMのヒット曲と比較してみましょう。こちらです。

いかがでしょう。曲と時代が違っても楽器構成とアレンジに驚くほど共通する部分がありませんか?途中で歪んだ音色のギターによるソロパートが入る、いわゆる「パワーバラード」として作られている所には10年前という時代を感じますが、それ以外はエバーグリーンな魅力を今も放っています。

つまりGMMの音楽制作チームには作曲やアレンジに関して確固たるセオリーがあり、時代が変わっても受け継がれているようなんです。これは日本だと「ヒットの方程式」みたいに言われてちょっと商売じみてくるけどタイの人はもっと素直です(笑)。「GMMの美意識」と呼ぶ方が正しいでしょう。

これこそがGMMの楽曲に感じる「品の良さ」の理由ではないでしょうか。流行に合わせてアップデートを繰り返しても、そのセオリーの根底に流れる「あの時代の音楽が持っていたものへの尊敬」は消えることがありません。Dew君が歌うこの曲もメロディを大切にした素敵な大人ポップスです。

現代のヒット曲のスタイルである次の曲にも品の良さは現れていて、強いキックとベースラインでビートを強調しながらもミックスの音量を抑えることでドラマでのNani君のキャラクターに合わせた「ワルに寄り過ぎない感じ」を見事に表現しています。各パートの分離も良くて聴きやすいですね。

これを、同じスタイルでもBright君がソロ名義(GMM傘下ですが、独立レーベルであるRISER MUSIC)でリリースしているこちらの曲と比較してみましょう。

こちらのキックとベースラインは過大入力で歪み始める寸前まで大きくミックスされた荒々しいもの。音も全パートが塊になって殴りかかってくるような凶暴さがあります。こりゃワルだわ(そういう曲だからだけどさ)。GMMとは全く違う仕上がりになってると思います。

このようにGMMの楽曲には、熟練の職人の経験と研ぎ澄まされた感覚で作られるブレンデッド・ウイスキーのような澄んだ色合いと複雑で上質な香りがあるのです。F4をウイスキーに例えるならサントリーの「響」じゃないかな。その高級感や甘い香りと味わい、メーカーを代表する銘柄であり海外での評価も高いところ、とかね!

こうして10年前からGMMを聴いていたおかげで予備知識ゼロでもコンサートを楽しめ、4人の俳優さんを通じて日本でのタイドラマ人気を改めて現場で直接実感できたのは大きな収穫でした。最後の挨拶で4人が感極まって泣き始めた時に、ステージと客席の間に4人とファンの想いがいくつも行き交っているように感じて僕もちょっと涙が出ちゃった。

コンサートを観たからには4人の歌だけじゃなくて演技も知らなきゃね、ってことで明日からF4の録画を1話から見ることにしたので、僕も晴れてタイ沼デビューです!先輩ファンの皆さん優しくしてください!

我が家はテレ朝チャンネル1も契約してるから完全版も観ます!

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