シティ・ポップ以外のタイポップスも面白い!「Radio Freedom」出演

タイ音楽

山麓園太郎です。サワディーカップ。

この1年で本当にあちこちからラジオやそれ以外のお仕事のお誘いがかかるようになって、もちろんこれは僕がレベルアップした訳ではなくてタイポップスを含むタイカルチャーの日本での認知度が爆上がりした、という事ですけれども、その1年というのはまさにコロナ禍とピッタリ重なっているんですね。

K-POPのこれまでの流れを思い出せば、「韓国のドラマと音楽が面白い!」って事になれば日本からガンガン韓国へ飛行機で飛べたじゃないですか。ソウルでCDショップ回ってコスメ買って美味しい物食べて、とか。向こうからだってBTSやTWICEの皆さんがコンサートで来日してくれてました。

しかし今は「タイのドラマと音楽が面白い!」って事になってるのに、タイの俳優さんやScrubbのファンの皆さんは誰もタイに行けてない&誰もタイから来ない状態なんですよね。「こんなに好きなのに!」っていう。おあずけ状態の中で愛はもうすっかり熟成して純度だって物凄い事になってますよ。

ですからこのコロナ禍が落ち着いた時にはですね、K-POPを凌駕する勢いでタイカルチャー体験が炸裂すると僕は思ってるんです。タイに旅行する人が予想を数倍超えるし俳優さんやバンドの来日件数も増える。

その時にどんなイベントや企画が走ってたら面白いかな?を考えて今のうちから仕込んでおくのがエンタメ業界の皆さんの腕の見せ所なんじゃないでしょうか。まぁコロナ相手にスケジュール立てても奴はそもそも脳みそ無いですから「了解です。では来年の5月にはなんとか」とは言ってくれませんが、待ってる間にこっちの企画がすっかり熟成してもう歴史に残るような成果が出る、なんてのもまたおつじゃないですか。

さて、僕は「アフター6ジャンクション」を始めとするラジオ番組でこれまでシティ・ポップ風味強めの楽曲を紹介してきましたが、今回FMおだわらの音楽番組「Radio Freedom」内のコーナー「アジアのポップスを聴く時間」でご一緒したのはK-POPとはまた違う韓国インディーズポップを日本に紹介するBUZZY ROOTSのIzumiさんです。僕も「シティ・ポップ以外のタイ・インディーズ音楽」を紹介しました。

LUSS「KUNGFU」

元Jelly RocketのPunちゃんとトラックメイカー/音楽プロデューサーのBen君(ひとつ前の記事「渋谷クロスFM「Tokyo add 9」のタイポップス特集」でオンエアしたWhaWhaのCrush On Youも彼のプロデュースです) によるR&Bユニット。2人とも韓国大好きでK-POPもよく研究しているからでしょうか、Izumiさんもツボに激ハマりしたそうです。この曲はLUSSの楽曲としてはR&B風味が薄いんですが、ゆったりしたスクエアなノリの四分音符を16ビートや6連符、はたまたバウンス(跳ねたリズム)に分割して捉える、というLUSSの魅力である「ビートの細分化」は端々から感じる事ができます。

LUSSが気になった方にはこの曲「RIDE OR DIE」もオススメです!とにかく2人のリズム感の良さが堪能できます。

quicksand bed「round and round」「Tough Guy」

実は「アフター6ジャンクション」でオンエアしようと思っていたけど生放送だったため時間の都合でカットされちゃったのが彼ら。やっと紹介できました!バンコクで今最も注目すべきモダン・ファンク・バンドです。まず1曲目「round and round」は現地のラジオチャートで最高2位まで上がったスマッシュ・ヒット。daynimというバンドの女性ヴォーカリストPlengをフィーチャーしています。

2曲目「Tough Guy」は彼らの発散するグルーヴが熱いナンバー。Music Video1分18秒から始まる演奏シーンでよく分かりますが、こういう身体の揺らし方してるミュージシャンのリズム感は間違いないです!

彼らの事が気になっちゃった方には彼らの公式YouTubeチャンネルに上がっていない演奏をご紹介しましょうか。「Sounds of the City」という配信ライブでのセッションから「Road of Vacation」という曲です。

mute.「Ouch!」

彼女のデビュー曲「Wait -da dee da-」は「アフター6ジャンクション」でも紹介しましたが、完全なアーバン・メロウだったデビュー曲から一転、シンプルな3コードのマイナーロックで仕掛けてきました。放送では「1番と2番の歌詞が全く同じ」と言っちゃいましたが実は冒頭の一節は違っています。とは言えほぼ同じ歌詞を繰り返す、メッセージ性の強い曲になっています。サビ部分の歌詞は

どうしてお互いに無理しなきゃいけないの?
思いやりのない人
もうたくさん!
私たちを縛るものは何もない
あなたがいなくても私は上手くやってる
それだけのこと
もうどうでもいい!

というもの。カップルが崩壊の危機に瀕した時に出がちな本音が、後半になって荒ぶってくるギターに乗せて延々繰り返される。という、直球の強さですね。

H3F「Waste My Time」

H3Fはタイの洋楽好きな若者から絶大な支持を受けるバンド。歌詞は全て英語で書かれています。楽曲はホール&オーツのようなブルー・アイド・ソウル系が多いですが、この曲はギター/作曲/ヴォーカルのGong君の嗜好が強く出たスモーキーなブルースロックをファンキーなトラックと組み合わせたサウンドです。

メンバーのフェイバリットは前述のGongがジミヘンやスティービー・レイ・ヴォーン、アルバート・コリンズといったブルースギタリスト達、もう一人のギタリストはマイケル・ジャクソン、ドラマーはPond(オーストラリアのサイケデリックロックバンド)、ベーシストはヒョゴだそうです。メンバーそれぞれが違うバックグラウンドを持ち、それらを血肉化した上でリーダーが描くビジョンを具体化するために最適のプレイをする、という「引き出しの豊富さ」は、H3Fに限らず新世代の洋楽志向のバンドに共通する特徴だと思います。

Zom Marie「Still Talking」

アイドルを経て大人のシンガーへ成長した彼女のこのバラードは亡くなった父親への想いを込めたものですが、実際のビデオ素材から作られたMusic Videoから切り離して楽曲単体で聴いても、そのクオリティの高さが際立ちます。タイポップスが世界で勝負できるコンテンツである事が実感できる1曲。事実、蔡健雅(タニア・チュア)やジャニーン・テニョーゾらアジア圏の女性シンガーと共にSpotifyのチャートに入りニューヨーク・タイムズスクエアのビルボードに表示されたのを、たまたまアメリカでワクチン接種を受けるためNYを訪れていたZom Marie本人が発見するというミラクルが起きています。

Safeplanet「New World」

セルフ・プロデュースと完全インディーズを貫きながら、ヒットチャートで大手レーベルのアーティスト達を抑えて1位を獲得したこの曲、ギター中心のバンド・アレンジでありながら所謂ロック的な歪んだ音色が少なく、クリスタルで瑞々しいサウンドがハイトーンのハーモニーに良く合っています。サバーイ・ポップスの代表格と言っていいでしょう。

事務所に所属しない彼らの活動はもちろんファンによるグッズ購入や配信での収入に支えられているんですが、年々人気が上がっていくのに着る服が派手になる訳でもなく、彼らは街の練習スタジオにいそうなバンド少年の雰囲気をずっと残しています。ただ、使う機材はPRSのギターやKEMPERのプロファイリングアンプといった高価な最新モデルにアップデートされ続けています。ファンからのサポートを殆ど音楽のためにつぎ込み、更に素晴らしくなった自分達のサウンドでファンに還元する、というファンとミュージシャンの幸せな関係が、ここにはあると思います。

では最後に番組で僕が話した「タイポップスの掘り方」に出てきた4つのサイトを紹介して終わりにしましょう。

インディーズ専門ラジオ局「Cat Radio」のトップ40

Cat Radio | Cat 40
5 - 11 September 2021

この記事を書いてる時点での最新チャートですが、URL末尾の数字4桁を1づつ変えてゆくと週ごとのチャートを見る事ができます。しかもYouTubeに直接飛べる親切仕様。

インディーズ情報サイト「Fungjai」

Fungjai – Indie Music Kingdom
ฟังใจ คือเว็บฟังเพลงระบบ Music Streaming ที่รวบรวมดนตรีของศิลปินและค่ายเพลงแบบไม่จำกัดค่ายไม่จำกัดแนวจากทั่วประเทศไทย ให...

Google翻訳も活用しつつ、あちこちクリックしてみましょう。

メジャー最大手レーベル「GMM Grammy」公式YouTubeチャンネル

https://www.youtube.com/user/gmmgrammyofficial

タイドラマの主題歌や洗練されたポップスをチェックするならやっぱり大手。傘下にサブレーベルとしてインディーズレーベルも吸収していて、White Music やGENE LABは特に要チェックです。

もうひとつの大手レーベル「RS」公式YouTubeチャンネル

https://www.youtube.com/c/rsfriends

タイでは特に早い時期(2010年代半ば)にCDリリースから撤退して配信に完全移行したレーベルです。活発にYouTubeを更新していますが、よく見ると1990年代までさかのぼって過去のMusic Videoを再アップしてるのが目立ちます。「アフター6ジャンクション」でも「タイは旧譜の無い世界」という話をしましたけど、現在はこうしてレーベルがYouTubeを活用してアーカイブ作業に着手してる所のようです。

コメント

タイトルとURLをコピーしました